秋限定!落花生の新豆を味わう魅力と収穫方法
落花生の新豆は、初夏に種まきが行われ、秋に収穫期のピークを迎えます。新鮮で旨みの詰まった落花生を食べられる瞬間は、1年の中で秋だけです。国内で育てられている主な落花生の品種は主に5つで、それぞれ旬の時期が少しずつ異なります。この記事では、落花生の新豆の魅力や収穫の流れ、品種ごとの細かい収穫時期についてご紹介します。
落花生の新豆の魅力
落花生は1年を通じて食べられるお豆ですが、とくに収穫期には旬の新鮮な新豆を味わえます。新豆の最大の魅力は、香りの豊かさと風味の強さです。新鮮なのでお豆が水分を多く含んでいてやわらかく、茹でるときも時間がかからず均一に仕上がります。落花生の収穫は秋頃に行われ、新豆が市場に並びます。品種によって収穫のピークは異なりますが、いずれも新豆ならではのフレッシュさを楽しめます。ただし、生落花生の保存期間は非常に短く、1週間程度しか鮮度を保てません。
海外産の落花生は届くまで時間がかかるため、煎ったものだけが販売されています。そのため新豆の旬の味を堪能できるのは、国内産の落花生だけです。国内では8割以上の落花生が千葉県で作られていて、品種によって違う甘みを持っています。茹でることで、ホクホクとした独特の食感が楽しめるのも新豆の魅力のひとつです。冷蔵保存のままでは1〜2日しか持ちませんが、冷凍するとフレッシュな味わいを長く保てるでしょう。最近では、新豆を塩茹でしてレトルトパックにした商品も登場しています。常温で3〜4ヶ月保存可能なので、温めるだけで旬の新豆の味を楽しめる魅力的な商品です。
落花生の収穫までの流れ
落花生の栽培は、5月中旬から6月上旬にかけての種まきからはじまります。農家では1日に収穫できる量に限りがあり、収穫期をばらつかせるために、種まきは10日程の感覚をあけて行います。種は乾燥した土に撒く必要があるため、水やりは行わないのが一般的です。種まきから1ヶ月半ほど経過した6月中旬から7月中旬になると、黄色く小さな花が咲き始めます。落花生の花は朝に咲いて夕方にはしぼみ、8月中旬まで咲いたり枯れたりをくり返します。ひとつの株には、なんと200個以上もの花が咲くそうです。
面白いのは、花が枯れた後の様子です。花の根元から子房柄という細い茎のようなものが出現し、地面に向かって伸びていきます。子房柄の先端は尖っているので、地面にもぐりこみ成長し、落花生ができあがります。収穫の目安は、茎や葉が黄色くなったり枯れ始めたりしたころです。同じ株でも地面に入ったタイミングによって落花生の成長にばらつきがあるため、大きくなった豆が多いときをねらって収穫します。新豆の旬は8月から11月頃で、花が咲き始めてからおよそ3〜4ヶ月後です。収穫のタイミングが早すぎると豆がやわらかすぎて、遅すぎると豆が傷む原因になります。
収穫がおくれるとサヤの付け根が枯れてしまうので、タイミングを逃さないことが大切です。収穫後は地干しという乾燥作業を行い、落花生の水分を飛ばしていきます。畑の上で裏返しながら乾かした後、株ごと積み上げて1ヶ月ほど乾燥させます。秋風に当てながらしっかりと乾燥させることは、甘みのある旬の落花生を作るために重要な工程です。最近では、雨や動物による被害のリスクに備えるため、ビニールハウス内で乾燥作業を行う農家も増えています。
旬の新豆を見極めるポイントは、さやの網目が全体の8割以上に出ている落花生を選ぶことです。表面が滑らかでツルツルしているものは、成熟しきっていない可能性があります。品種にもよりますが、太過ぎず細長いのが理想の形です。太り過ぎている落花生は、旬が過ぎている場合があります。
品種ごとの新豆の収穫時期
国内の主な生産地である千葉県では、中手豊など5つの品種の落花生が栽培されています。収穫期は8月から11月頃ですが、品種によって種まきのタイミングが違うため、旬の新豆が食べられる時期も異なります。収穫時期によって、落花生の食べ方が変わるのも特徴です。
⚪︎郷の香
郷の香は、茹で落花生用に品種改良されたお豆です。ほかの落花生に比べて、土のなかに寝かせておく期間が短いため、早い時期に収穫できるのが特徴です。8月下旬から9月中旬頃が旬で、収穫後すぐ市場に新豆が出回ります。茹で落花生用の豆は乾燥させる必要がないので、収穫してから販売されるまでの時間が短くなります。新鮮な旬の味をいち早く楽しめるのが、郷の香の魅力のひとつです。旬の時期が早いため、生落花生を買えるのは直売所などに限られています。郷の香は粒が大きめで、すっきりとした甘みが特徴のお豆です。サヤが薄いので、塩ゆでをすると味がよく染み込みます。見た目も白くてきれいで、豆の熟し具合が揃っているため、品質にばらつきが少ないのも嬉しいポイントです。レトルトタイプの茹で落花生として、広く使用されている品種です。
⚪︎おおまさり
茹で落花生用に開発されたもうひとつの品種であるおおまさりは、2010年に登録された比較的新しいお豆です。収穫期は9月から10月頃で、最大の特徴は実の大きさにあります。手のひらからはみ出すほどのサイズ感で、大きさは一般的な落花生の2倍以上です。規定より大きいおおまさりは、千葉県落花生協会のマークが付けられ、認定品として販売されます。収穫後すぐに殻が黒く変色してしまうため、新豆を購入したらできるだけ早く茹でて食べるのがおいしく食べる秘訣です。保存性が低く、主に収穫地近くのスーパーや直売所でしか手に入りません。食感はホクホクとやわらかく、強い甘みを持つのが特徴です。2022年には、より育てやすく病気に強いおおまさりネオが登場しました。従来のおおまさりよりもコンパクトに栽培できるため、人気の広がりが期待されている品種です。
⚪︎中手豊
千葉県で2番目に多く栽培されている中手豊は、9月下旬から10月初旬に収穫が行われます。新豆が市場に出回るのは10月中旬以降で、煎り用落花生のなかでは比較的旬の時期が早い品種です。中手豊はあっさりとした甘みが特徴で、細長く白い見栄えの良さからギフト用としても人気があります。株の形状から多くのサヤが育つため、収穫量が多く、価格も比較的手頃です。しかし中手豊は量が安定している分、収穫のタイミングに慎重さが求められる落花生です。時期を間違えると、大量の新豆の品質が低下してしまうでしょう。中手豊は葉が茂っている段階で旬を迎えるため、試し掘りしてサヤの内側の色を確認しながら収穫作業を行います。
⚪︎Qなっつ
2018年に登場したQなっつは、千葉県が20年以上の時間をかけて開発した品種です。9月中旬から収穫がはじまり、新豆を楽しめるのは10月中旬頃です。今までの落花生では味わえないようなはっきりとした甘みがあり、誰でも食べやすい味わいを持っています。食べた瞬間は甘さを感じますが、後味はあっさりとしているのが魅力です。干ばつや病気に強いため、栽培しやすい落花生として注目されています。落花生栽培は手間がかかる一方で、収穫量が天候に大きく影響されやすいという課題を抱えています。千葉県では農家の高齢化も進んでおり、栽培者が減少しているのが現状です。Qなっつは発芽率が高く、発芽しなかった場所に植え直す手間がかかりません。病気にも強く、安定した収穫量が確保できるため、農家にとっても消費者にとっても魅力的な品種です。豆類をあまり食べ慣れていない人でもおいしく感じられるため、落花生の普及に一役買っているお豆です。
⚪︎千葉半立
千葉半立は、1952年から育てられている歴史ある品種で、国内産落花生の発展に大きく貢献してきました。収穫期は10月下旬から11月上旬と最も遅く、新豆が出回るのは11月中旬から12月になる場合もあります。風味がとても豊かで、コクと甘みのバランスが絶妙なことから落花生の王様と呼ばれています。噛むと強い甘みが感じられ、やわらかい食感がクセになること間違いありません。株が横に広がって成長する性質を持ち、栽培面積に対しての収穫量が少ない貴重な品種です。最近では収穫量の確保が難しいため、栽培する農家が減少しています。病気への耐性が弱く、天候によっては収穫が難しい年もあり、希少性が高くなっています。ブランド品種であるため価格設定も高めですが、落花生本来の甘みを十分に味わえる品種であり、1度は食べてみる価値のあるお豆です。
お豆のピープルの新豆落花生
お豆のピープルでは、旬の時期になるとフレッシュな新豆の落花生を味わえます。使用しているのは中手豊で、きれいな形と色を持ち見栄えがよい落花生です。さっぱりとした味なので、飽きることなく旬の味覚を味わえます。中手豊は甘すぎないため、お菓子やおつまみとして食べやすい品種です。中手豊の新豆は生のままでも香りが豊かでみずみずしさがありますが、煎ることで香ばしさとのハーモニーを楽しめます。お豆のピープルでは、素煎り落花生は電気焙煎で仕上げています。電気でお豆を焙煎しているお店は限られていて、とくに当店では国内に数台しかない貴重な焙煎機を使い続けています。長年の経験と技術をいかして、焼き色の付き具合を細かく確認しながら、丁寧に時間をかけて焼き上げています。落花生のはぜる音を聞きながら煎り時間を調整できるのは、職人ならではの技術です。電気焙煎により、新豆のみずみずしさを保ちつつ、ふっくらとした食感のお豆ができあがります。細かな温度調整をすることで、旬の落花生のやわらかさとカリッとした食感の絶妙なバランスを整えています。新豆の季節は、お豆の新鮮さと職人の技術が融合し、高品質な落花生を味わえる絶好の時期です。
まとめ
落花生の新豆は香りが豊かで、みずみずしさがあります。品種によって収穫の時期は異なりますが、8月から11月頃が旬の季節です。品種ごとの旬の時期を知っておくことで、新鮮な新豆の味を楽しめます。また旬の時期を少し過ぎると、新豆を使用した煎り落花生などの加工品が販売されます。1年の中で、落花生を1番おいしく食べられるこの時期を逃さないようにしましょう。